宿酔



砕け散ったグラスと溢れたカクテルが
酔えないこの体に麻酔をかける

あれやこれや文句をマスターにふっかけて
タダ飲みしようとするせこい客がいたもんだ

ねえ明日の朝には全てなかったことにして
気弱そうなあのマスターとワインで乾杯しようじゃないか


小さくなった氷を噛み砕いて飲み干せば
鼻から吸った麻酔が切れるのが分かる

ねえ心細くて泣き出しそうだなんて
強気で生きる私にはちょっと大根役者も失笑する

あーあーあー 酔える酒をくださいな
あーあーあー 明日のことなんてどうでもいいわ

あーあーあー ゴミクズのようなこの街で
あーあーあー それでも月は綺麗なもんさ


この街じゃ誰しも寄り添う誰か探して
結局戻る場所は小さなガラスの中






制作:2017/09/16