『私の愛したカンパネラ』には様々なクラシック曲が登場します。作中、瀬名はすみと城春輝が二人で演奏する曲は、純粋なヴァイオリンとピアノのためのソナタだけではなく、春輝がデュオのために編曲したものも多いですが…。ここでは、『私の愛したカンパネラ』の作中やサブタイトルに登場したクラシック曲を紹介していきます。
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『私の愛したカンパネラ The 2nd movement』あとがき
文学フリマ東京40の新刊だった『私の愛したカンパネラ The 2nd movement』は、2022年の文学フリマ東京で発行した『私の愛したカンパネラ』の続編です。初めて出店した文学フリマで発行した作品の続きを書くことになるとは思いませんでした。コピー本では何度か、ヨントリーホールを埋めるような人気デュオになっている二人を書いていますが、その間の二人のエピソードを書きたくなり、続編を書くことに決めました。
2022年に前作を発行してから約3年の間に、私自身も当時よりずっとクラシック音楽に触れる生活をしてきました。私は3歳からピアノを弾いてはいましたが、外でしっかり習ったことがなく、2022年の秋にクラシックピアノを習い始めました。クラシックコンサートにも月に一度は足を運び(特にピアニストのリサイタル)、Apple Music Classicsで日常的にクラシック音楽を聴くようにもなっています。ウェブで『私の愛したカンパネラ』を連載し始めた頃には、まだ行ったことのなかった音楽ホールにも実際足を運び、はすみと春輝が立つ舞台を想像もしました。
3年ぶりに瀬名・城コンビを書いたということで、裏話などを書いて行こうと思います。ネタバレも踏むまれるため、未読の方はご注意ください。
続きを読む『硝子のホログラム』あとがき
先日の文学フリマ京都にて発行されたアンソロジー『𝑠𝑎𝑛𝑎𝑡𝑜𝑟𝑖𝑢𝑚 𝑜𝑓 𝐸𝑑𝑒𝑛』に『硝子のホログラム』という作品を寄稿しました。このお話を書くにあたっての裏話や裏設定などをお話ししたいと思います。ネタバレも含まれますので、未読の方はご注意ください。
続きを読む『花々の幕間』あとがき
文学フリマ東京38の新刊だった『花々の幕間』。この作品は、神戸に本拠地を置く、〝藤花歌劇団〟にまつわる昭和初期のお話です。既出の 『この花の涯まで』、『いつか枯れる花に水をやる』、そして新作として『花は海に散るとして』の三作を収録いたしました。この記事では、あとがきのような、裏話のような、本編で書きそびれた設定などを綴っていこうと思います。
続きを読む『未必のトラジェディー』あとがき
“並木夏海を殺したのは自分です”という東有理の懺悔の手紙の一文から始まった小説でした。この話が開始された時点で並木夏海は故人なので、作中一度も並木夏海を喋らせないことを徹底しました。回想の中でこう言った、ということはあっても会話は出て来ていないはずです。
昨今色々と話題に上る性的マイノリティー的な話もちらりとは出て来ますが、何か説教臭いことや啓蒙をしたいわけではなくて、ただ一人の人間が生きて死んだ、ということを書きたかっただけでした。きっと人間は色々な顔を持っていて、有理から見た夏海、はすみから見た夏海、両親から見た夏海、陽加から見た夏海はそれぞれ一致するものはない、当然晶穂の知る夏海とも違って、だから晶穂は迷走してしまい、混乱もして…書いてる私が一番混乱しました!
ちなみに店長が晶穂に話したことはアウティングではなく、夏海が生前店長に何かにあれば晶穂に話してくれ、と頼んでいた内容です。念のため…。
私自身、もう随分前に祖母を亡くしているのですが、とにかく受容ができなくて立ち直るのに何年も何年もかかった人間でした。一時期は仕事もできないくらいに落ち込み、部署異動もしましたし、何もしなくても泣けて来たり、頻繁に祖母や家族が夢に出て来る時期がありました。当時は人が死ぬドラマや映画、アニメさえ見るのが辛く、こうして人一人の死を扱った小説が書けたのは、今だからです。有理も陽加もはすみも、そして晶穂も、きっと受容できるようになるまでの年数は違うのだろうなと思いながら、この小説の終わりを書きました。
続きから細かい裏設定など。
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